◯「A」のパワー。
いよいよ本年も、早やプロダクティブ&プロアクティブな様相を呈してきた。徹夜仕事も早々で、時間と空間のフレームが、何が一般で何が特殊なのか訳がわからない時間と場所でめまぐるしく情報編集している感じがする。
しばらくコンを詰めてとりくんでいると、突然わーっと涙があふれてきたり、それ以上の思考が急遽ストップして、進みたくなくなる瞬間がくるので、そうしたときには、横になって瞬間の眠りに入る。そして、はっと気づいて、再び起居してMacの愛機に向かう。目の前のスクリーンの文字やかたちを見ていると反応的に指がキーボード上を無意識的にサーチして自然に動いてゆく。こう記すと何かが自動書記でもしているような感じだけれど、そんなことはなくて、やはり自分の脳内の情報結線が、フォルムを生み出しているはずではである。
反応の速さは、直感的に正しいものをつくりだしているように思う。右往左往悩ましい状況にある時、入力とデリートを繰り返している時は、まだしっかりとしたフォルムの形成が成り立たない。
時間切れで、時折、カット&コピー&ペーストで一応形づくってやっつけちゃうような時には、後になって良品は決してできあがっていないし、やはり着々と根を詰めて、努めて、時間切れが迫っても、もう一押しもう一押しでぎりぎりまで粘るものの方がよいに決まっている。
井上ひさし先生は、遅筆でたいへんに名をはせていらっしゃる大家でいらっしゃるけれど、結局、締め切りに追われるか、その締め切りを無視しても本熟成を頑なに守るかによって、後の伝説の旨味が異なるのだろう。
職人的仕事には、それなりの時間が必要なのだといいきかせ、手を抜いてはならぬ心に言い聞かせながら、頭と手がつながる情報が熟成してくるタイミングを願って、繰り返し繰り返し思考の試行を重ねてゆく。
でも、大家でもなんでもない私などは、締め切りは待ってもらえない、だから時間と空間を歪ませて、その合間のマジックをつかわなくてはならない、早打ち&平行思考技の編集力勝負となる。
ところで、そのようなことのためか、不思議なことに、どうも私の指は左手の薬指のタッチがひじょうに強いようである。
とりわけそのキーボード使用頻度が高いためかもしれないけれど
現在使用しているMac2台とも、「A」の文字のみ、すでに消えてしまっている。
それにしても、はて?昨年末に新しくしたはずなのに、たった10日足らずの使用で?
確かにずっと夜な夜な仕事だったけれど・・?
実は、昨年末までに永年使用していたiBook、「A」のキーも、他のいくつかのキーも、数年間の使用で、文字が消えて、プラスチックの中心がすり減って、中のゴムのアタッチメントが飛び出して、それでもがんばって使っていたら、いよいよそのゴムの突起もちぎれてしまって、Appleストアにキーボードの替えをお願いしたら、「3週間はかかります」といわれ、そんなに入院されてしまっては、仕事が立ち行かない状況になってしまうので、それでそのゴムを逆さまにさしこんで上からただしく垂直に押すとまだ「A」が反応してくれるので、ありがたいとばかり、それで使用していた。ところが、いよいよ年末の12/27のクライアントプレゼンの時に、その大切なゴム突起パーツがどこかにトンで行方不明になってしまい、いよいよ銀座のAppleストアにもちこんだ。
半分泣きべそで
「実はたいへん困っているんです、
このAのようなキーボード状態を
ご覧になったことがおありでしょうか?」と
ジーニアスバーのMac天才スタッフにお伺いする。
「あれれ、すごいですね、
こんなになっちゃいましたか。」
「はい、たいへん愛していたMacなんです、
実によく働いてくれたものですから。
こんな状況になっても、
頑張ってくれていたんです」
「愛していたんですね」
「はい、このような状況になった場合、
すぐにキーボードを変えることは
可能でしょうか?
このような事態になるまでの使用例は
ご覧になったことがないと思いますが・・」
「はい、はじめてですね、
このような状態になるまでのものは。
よく使い込んでくださったんですね。」
「はい、実は、キーボードをすぐに替えられないと、
この年末、非常に困り果ててしまうんですけれど、
何か方策はありませんでしょうか?」
「お困りなんですね。」
「はい、たいへん困り果ててしまうんです。」
「では、少々お待ちください。」
なんて頼りになるんでしょう!
ジーニアスなAppleストアのスタッフは、いつも困難な状況にある迷い子の救済を力強く導いてくれる、絶対的な信頼がある。背筋の通ったすっとした若い青年で、こうした対話を振り返ってみても、迷い子の心を包むコミュニケーションの基本対応を心得ている。
さすが、Apple・GENIUS !
そうして輝くばかりの救世主は、
ほどなくして戻ってきて
「キーボードのパーツがありましたので、
すぐにお取り替えできます。」ですって!
ときめきながら彼の目をみつめてしまった。
「ありがとうございます!」
「10分ほどお待ちいただけますか?」
「あ、そんなに短い時間ですか?」
「はい、お困りなんですね?」
「はい、はい、そうなんです、
よろしくお願いいたします・・
あのー・・」
「はい、何でしょうか?」
「あの、勝手なお願いなのですけれど、
その古いくたびれたキーボード、
いただいて帰る訳にはいかないでしょうか?」
「はい、基本的には、交換パーツは、
お客様には差し上げられないきまりに
なっていまして、こちらでおあずかり
することになっています。」
「そうですか、そうですよね。
実は永年のつきあいをした、
何だか大切な思い出のようにも
思えたものですから」
「そうですね、大切な思い出なんですね」
「はい・・・」
「・・それでは、少々お待ちください」
そういわれて、ジーニアスさんは、Appleストアの奥の間へと姿を消していった。
ほどなくして、その人は颯爽と光と共に戻ってきた。
「お待たせしました、交換ができました。」
といわれてみると
ぴかぴかの新品キーボードが輝いている。
「ありがとうございます。」
「では、こちら、
マネージャーに相談しまして、
特別思い出があるということでしたので、
今回だけ特別に
お持ちいただけることにしました、
こちらをどうぞ。」
「よろしいんですか?
わー・ありがとうございます!」
こうしてApple エバンジェリストは、
生涯MacファンのBrand Loyaltyを
ますます強く深く感動的に定着させてくれたのでした。
私の仕事もこうでなくっちゃ。
ジーニアスさんに、心からの感謝!

取り替え直後の新&旧
ところが年明けて、また、すでに新たなiBookのキーボード
なんと「A」の文字が、もうすでに消えちゃた。
G4のキーボードも
昨日までは「A」が「△」になっていて、
いよいよ今日は「∧」になってしまっている、
不思議・不思議。
ジーニアスさん、これはいったい何故でしょう?
また、お世話になるかもしれません・・・