Saturday, September 09, 2006

◯精神の止まり木。

峰はみな
しずもり
梢に
風のそよぎなく
小鳥は森に深く黙す。

夏の思い出をたどりながら
深まりゆく秋の気配に心を澄ます夜。

静かにリフレクションをめぐらすと
どこからやってくるのか意識のなかに写像が浮かぶ。

目を閉じれば天空の無数の星。
地球上の真砂の数ほどあるという星が煌めいてみえる。



私という存在はどこから来たのだったか?
私という存在はどのようなものだったのか?
私という存在はこれからどこに向かうのか?

待てしばし
やがて
おまえも憩えよう。

旅人の夜の歌は
いつでも精神の止まり木として
これまでの旅のやすらぎのよりどころだった。

知らず知らずのうちに
どれだけの日々を憩うことなく通り過ぎてしまったことだろう。

仰げば瞬間に流星が降る。




どうか憩いとともに内が満たされ
なにごとがあったとしても
逞しくすることが叶う人生の旅でありますようにと願う。




再び静かに省察をめぐらす。
再び意識のなかに浮かぶ写像を追いかける。

光があふれる。




朝の来ない夜はないという。
しずもり峰も森もあらたな光に照らし出される。








アリゾナセドナの大地のエネルギーに満ちた
熟成した赤い岩の群景と
その峰の裾野に広がる森の輝き。

そうだ。

ボルテックスと呼ばれるその岩には
ネイティブアメリカンの
安らぎの祈りが込められているのだった。
悠久の時のなかで人々はそこに
精神の憩いを得られたのだろう。

秋の夜に
灯火とともに内に憩い
やがて光射す朝を迎えて
外に向かう力も豊潤に深まりゆく季節。

ようやく立ち止まる秋。

Thursday, September 07, 2006

◯夏青し。秋白し。

葉月を迎えて
鳴く蝉の声もだんだんとセピア色に遠のいてゆく。

今年の夏も過ぎゆく。

空中の芳醇な気配に
初秋の薫風がやわらかに日焼けした肌を撫でゆく。

暦の上では『白露』。

旧暦では8月節入りだけれど
太陽暦では最早
秋の最中にして露おのづから白し故に白露という。

今年の盛夏は
それまでの何もかもを融通するために
2週間の人生の空白を選択した。

今年の春から多忙を極めてめまぐるしかった日々は
何かを狂わせていた。
やむにやまれず
リセットしなくてはならない時機にさしかかっていた。

この地球に生まれて
今ここにいる自らの存在。

そのちっぽけなあやふやさと対峙するために
どこまでも際限のないスフィアな空間に魂を解き放った。




思えば22年ぶりの NICE 再訪。
同じ浜辺の同じ石の上に横たわった瞬間に
時と意識が原点回帰した。

未来のいくらかの展望に
期待と不安とがまじりあったアンニュイな心持ちの
あの頃の自分がそこにたたずんでいた。

無意識のうちに
内なる何かが
私自身の身体をそこに運んだのだろうか?

周囲のしつらいは長い時の流れのなかで変化していたから
最初のうちは気づかなかったのだけれど
仰向けになって広がる空を見つめて左右に視界をひろげていったら
ふいに眼前にとびこんできた
南仏の風にはためく
プライベートビーチ入り口のフラッグの文字。

RUHL PLAGEという名前。

あの日あの時のこの場所だ。

記憶が突然鮮やかに甦った。

ホテルのフロントに友人が私宛に残したメモ紙。
「海岸沿いのRUHL PLAGEで待っているね!」の文字。
青色のボールペンのインクだまりのある筆跡までもが
ありありと脳裏に浮かんだ。

そして友人と共に
今ここのこの浜辺の同じ経度緯度に並んで
地中海の陽光に包まれながら
将来の人生について
未だ見ぬ夢を語り合ったのだった。

どこまでも澄み渡る
虚空の宇宙空間につながる青天を見上げて
時の流れを思い
静かに目をつむる。

残像に白いパラソルが踊った。




コートダジュールのコバルトブルーを眼前に
マクロにミクロに
視点をうつし
視座をすえて
視界をふりかえる。





時とともに色はうつろう。
大自然は豊饒に生きづく。





小さなところにとどまっていないか。
大きなところでみえなくなっていないか。

小さなところにも目を凝らせば深大な世界が開く。
大きなところにも心を澄ませば細微な世界が潜む。

極微の精神の粒子がきらめいて光こぼれる
その瞬間の波長を心にとどめおきたい。








そして、真っ白な秋を迎える。

真・善・美というものは、
実は、深甚すれば言語に尽くせないものがあることに触れゆく。

ただそこにある。
ただそこに触れゆく。

寡黙のなかに姿をあらわしてゆく真実を極める魂の姿勢を学ぶ。

今(いま)を居間(いま)として
その存在に起居する間に。

うつろいただよう時のまにまにただあるがままに
厳然と漂流のような日々。

ただそこにある。
ただそこに触れゆく。