◯ピース。ミッシングピース。
茂木健一郎さんの『レディ・メイド』に勇気を出して
応募してみます。
タイトルは『ピース。ミッシングピース。』です。

弥生。3月。
誕生日祝いに何がいい?と骨董ギャラリーで言われ
『弥生の壺(つぼ)』をねだった。
端正なギャラリーの棚の中程に
そこはかとない存在感でころんと置かれていた
その壺の前には
「弥生時代」と書かれたちいさな札が用意されていた。
「どうして弥生時代だとわかるのですか?」と尋ねると
「形態や質感でわかるのです。
水を入れたときの土が放つにおいでも判明します。」と
きっぱりと店主に言われて感動した。
「どのあたりから採取されるのですか?」
「中国からが多いですね。日本でも掘ればたくさん出ますよ。」
「あの、2箇所に欠けた跡があって、補修されているのですが」
「ちょうどその傍にかけらがちゃんとみつかったのですよ」
「ミッシングピースがちゃんとみつかったのですね!」
「そうですね」
「ぴったりあってはりつけられていますね!」
「そうですね」
「かけてしまったものがきちんとであったのですね!」
「そうですね」
「部分の断片が全体につながったのですね!」
「そうですね」
「こちらをください」
「毎度ありがとうございます!」
B.C.からA.C.の時代のはざまに日常につかわれていたであろう
弥生の壺。
その真贋ははかりかねるけれど
その心願に添い合って出会うことのできた弥生の壺。
横にして耳にあてて心を澄ませば
その吸い込まれるような静謐な空の音に
遠い昔のなつかしい望憶が胸のなかに脳のなかにあふれてくる。

遠く2000年もの月日を経て
弥生に用意されし壺。

もしも弥生にも生きていたのなら
同じようにこの壺にめぐりあい
壺に耳をあてながら遠い未来に心を澄まして
その農耕の実りを宿らせた聖櫃の空なる音に
幸せな気持ちを味わっていたかしらと思いめぐる
弥生の桜待つ宵。